- SaaSを増やしても業務が楽にならない主な原因は、ツールの性能ではなく「データが分かれていること」です。
- 解決策はツールの追加ではなく、入力が1回で済む「ひとつのデータベース」=ERPへの統合です。
- 切り替えのサインは3つ:マスタの突合に半日かかる/ツールの請求が5本を超えた/経営会議に数字が間に合わない
「勤怠も経費も評価も、良いSaaSを入れたはずなのに、人事の仕事が楽になっていません」。
中堅企業の管理部門から、よく挙がる悩みです。
ツールは増えた。
それなのに、残業は減らない。
原因はどのツールの性能でもなく、データがツールごとに分かれていることにあります。
SaaSの詰め合わせで起きていること
1つずつは優秀なSaaSでも、組み合わせて使うと現場では次のことが起きます。
| 症状 | 現場で起きていること |
|---|---|
| 二重入力 | 入社1人につき、勤怠・給与・経費・評価などの複数のシステムへ同じ情報を登録する |
| マスタの不整合 | 異動や退職の反映漏れで、ツールごとに従業員リストが微妙に違う |
| 突合作業 | 給与計算のたびに、勤怠システムのCSVを目視で確認してから取り込む |
| 数字がつながらない | 労務費や工数を部門別に見たくても、複数ツールを手作業で合算するしかない |
| 管理の負担 | ツールごとのID発行・削除、契約更新、値上げ交渉が積み上がる |
どれも「ツールが悪い」わけではありません。
最初の4つの症状は、それぞれのSaaSが自分専用の従業員データベースを持っているため
つまり会社の中に「従業員マスタ」が4つも5つも存在してしまうことが原因です。
5つ目の管理の負担は、ツールの数そのものが生むコストです。
問題はツールの数ではなく、データが分かれていること
象徴的な例を挙げます。
たとえば100名規模の会社で、毎月の給与計算の前に、勤怠システムと給与システムの従業員リストを突き合わせる。
先月の退職者が勤怠側に残っていないか。
今月の入社者が給与側に漏れていないか。
このズレ探しに毎月半日かかっている。
そんな光景は珍しくありません。
経営側から見ても同じ問題が起きます。
「部門別の労務費を出してほしい」と頼むと、担当者は勤怠・給与・経費のデータをExcelで合算し始めます。
数字が出てくるのは数日後。
数字を見て打つ手を考える時間より、数字を作る時間の方が長い。
これがSaaSの詰め合わせの行き着く先です。
SaaS同士のAPI連携で解決しようとする会社も多いのですが、連携は「写し」を同期する仕組みです。
日常の運用は回っても、障害時・仕様変更時・連携対象外の項目でズレは残ります。
マスタが複数あるという構造そのものは変わりません。
ERPの本質は「ひとつのデータベース」
ERPと聞くと「機能がたくさん入った大きなシステム」を想像されがちですが、本質は逆です。
ひとつのデータベースの上に、勤怠や給与などの機能が載っている。
この構造こそが、本来の(統合型の)ERPです。
従業員マスタが1つしかないので、入社の登録は1回で終わります。
勤怠の実績はそのまま給与計算に流れ、経費や工数と合わせて部門別の数字が自動で集計されます。
突合作業そのものが存在しなくなるのです。
なお「ERP」を名乗る製品でも、実態は複数製品をつないだ連携型のものがあります。
選定のときは「従業員マスタは物理的に1つか」を確認してください。
かつてERPは大企業専用で、数千万円と1年以上の導入期間が前提でした。
クラウド化と初期設定の自動化が進んだ現在は、中堅企業が数ヶ月・月額数十万円の水準で使える選択肢になっています。
国もこの構造問題を指摘しています。
経済産業省のDXレポート(いわゆる「2025年の崖」)が主な対象にしたのは古い基幹システムですが、その核心は「システムが分断され、データを全社で活用できないことがDXの足かせになる」という指摘でした。
この構造は、SaaSが乱立した状態にもそのまま当てはまります。
切り替えのサイン3つ
SaaSの詰め合わせが常に悪いわけではありません。
30名までなら、むしろ単機能SaaSの組み合わせが軽くて速い。
当社もその規模のお客様には統合型を勧めていません。
見直しを考えるべきサインは3つです。
① マスタの突合・二重入力に月あたり半日以上かかっている
人件費に換算すると、この1業務だけで年間十数万円を「ズレ探し」に払っている計算です。
二重入力や問い合わせ対応まで足すと、負担はさらに膨らみます。
② 従業員情報を持つツールが4つを超えた
マスタ分裂が進むほど、ズレの発生源が増えます。
利用料やID管理・契約更新といった管理コストも、ツールの数に比例して積み上がります。
③ 経営会議に「先月の数字」が間に合わない
数字を作るのに日数がかかる状態は、打ち手が常に1ヶ月遅れることを意味します。
2つ以上当てはまるなら、次の増員や期初を待たず、統合の検討を始める時期です。
100名の壁が視野に入っている会社ほど、先回りした方が結果的に安くつきます。
次にやること
まず、自社で使っている業務ツールを1枚に棚卸ししてください。
書くのは「ツール名」「月額」「従業員情報を持っているか」の3列だけで構いません。
従業員情報を持つツールが4つ以上並んだら、それがマスタ分裂の現在地です。
当社のunitoは、この記事で書いた「ひとつのデータベース」の考え方をそのまま製品にしたものです。
勤怠・給与・評価・手続き・経費・顧客管理までを単一のマスタで動かします。
unitoの製品ページからご覧ください。
参考資料・出典
※本記事は一般的な情報の整理です。個別のシステム選定は自社の業務要件に基づいてご判断ください。